電話越しの

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 生田はその反応に堪らなくなって涙が出そうだった。まさか本当に、自分の知らないところで久世が誰かに触れられているとは。そんなことは考えたくなかった。知りたくなかった。それなのに、突きつけられてしまったのだ。 「透、いい加減マシな嘘をつけよ! 僕のことが好きならバレない嘘をついてくれ!」  生田は悲鳴に近い声でそう叫んだ。 『……雅紀だって木ノ瀬さんがいる』  生田は激昂した。 「ああ、またそれだ! 前と同じだな」  二人は出会ってから付き合う以前に、生田はみどりと、久世は西園寺と関係を持っていて、互いに嫉妬して同じように口論したことがあった。 「ちなみに言うけどな、僕はみどりとは何もしていない。キスすらおざなりにするくらいだ。別れて以来まともに手も触れてないんだ!」 『……それでも結婚はするんだろう?』 「ああ、そうだ。それなら透だってそうだろ? 透にその気がなくても政略結婚なんだろ?」 『……櫻田さんとはしない』  生田はそれを聞いて、その言葉の意味を飲み込むまで時間を要した。 「なんだよ……『櫻田さんとは』って。『とは』ってなんだ? もしかして、御曹司である久世秘書官には他にも婚約者がいらっしゃるとでも言うのですか?」  言いながら結論づいて、それに自分で激昂した。 『……晶とも、結婚する気は……』 「あきらぁ?」  生田は嫉妬が許容量を超えて目の前が真っ暗になった。  他人と親しくなることのできない久世は、余程の仲でなければ下の名前で呼ぶことはない。その久世が生田も知らない人間の名前を親しげに呼んだのだ。 「……わかった。わかったよ透」  生田は怒りが臨界点を突破して、逆に冷静な声になっている。 「その山科晶嬢は……女だろ? 婚約者なんだから。その晶と言う女とは会話が止まらないほど趣味があって、透からは手を出していないが、結婚前から既に身体の関係もあって、あの櫻田とは違って好意を抱いていると、それで間違いないな?」  一語一句間違いがなかったため、久世は何も答えられなかった。 「……その沈黙で十分だ」  そう言って、生田は通話を切った。
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