二杯目

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 久世は母に似たその性格を自覚していたばかりか、周りも久世のそんな性格を知っているから気を使われることもあるが、利用されることもある。しかし生田にだけは違った。久世自身も驚くような積極性を見せ、生田が喜ばせるためにあれこれと考えたり、先回りして用意したり、かと思えば後先考えない行動を取ったり、衝動に駆られたりもする。一般的にと比較をすれば好きな相手になら当然のことかもしれないが、久世を知る人たちから見ると驚異的なことだった。初対面でも見る目のある人にならすぐに久世の想いを悟られるのも、それがゆえのことだった。  恋は、人を愛するということは、そのようにして人を変えてしまう。  父と母にもそのような時がかつてあったのだろうか。それとも最初からこのような関係だったのかと、久世は自分の変化を父母に繋げて考えた。母の変化は自分のように良い方向ではなく悪い方向だったと結論づけると、人にもよるだろうが、政略結婚というものは不幸を生み出してしまうものなのだと改めて思って、さらに忌避感が強くなった。  久世は自分の思考に沈み込み、父が一人で朗々と話す知人や仕事の話題を意識散漫な状態で聞いていた。  食事も終盤に差し掛かった時、父がおもむろに言った。 「透、山科邸へ出入りしていたようだな」  久世は反応に遅れたが、父は久世を見据えたまま先を続けないので、久世が返答するまでの時間はたっぷりとあった。 「……事実です」 「あの山科の一人娘を気に入ったのか? 西園寺の言う通りにその娘と結婚するのか? この俺が選んだ櫻田の娘ではなく?」 「私はどちらとも結婚したくはありません」 「山科とは結婚しなくてもいい。だが櫻田の娘とは結婚してもらう。結納の日取りも決まっている」 「お断りするとどうなりますか?」  父は間を空けた。自分から目を逸らしてどこやらを見ている息子が、気づいて自分の方へ視線を向けるまで待った。  久世は父の思惑通り、視線を向けた。 「……名を捨てろ」  久世は一瞬怯んだが、以前にも言われていたことで覚悟を決めていたのですぐに気持ちを立て直した。  父は続ける。
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