クラブBootleg

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 西園寺の部屋に案内されると思っていたが、車は邸宅を通り過ぎて離れの方へ向かった。  新築のようなその離れは、ガレージが建物の一部となっていて、外観はまるで車の展示場のようだ。  建物に通じる部分は全面ガラス張りで、車庫から室内を見ることができる。車をガレージに入庫すると、そのガラスのうちのドアになっているところから、西園寺は入っていった。晶も勝手知ったるといった態度で迷うことなく後を追う。  久世はずらりと並んだ高級車に目を奪われながらも、遅れて二人を追いかけた。 「二階に客間がある。そこを使え。着替えや必要なものはそれぞれ持ってきてもらうように。食事と酒以外は何も出さないからな」  西園寺がバーカウンターで何やら酒を吟味しながら言った。  晶はそうそうに一人掛けソファに腰を落ち着けて、煙草を吸っている。 「何時に行く?」  晶は白い絹のワンピースのままだ。あの黒い革の上下は置いてきたのだろうか? 「……そうだな。夕食を済ませてからにするか?」 「何時?」 「うーん、腹減ってるか?」 「別に」 「俺もだ。透は?」  座るでもなしに、壁に寄りかかって二人を眺めていた久世は、いきなり声をかけられて反応が遅れた。 「何を突っ立ってる。座れ。いや、まずこれを飲め」  西園寺がウォッカのソーダ割を差し出した。  久世は言われて西園寺の元へ向かう。  受け取ると、西園寺が自分のグラスを久世のグラスにカツンと鳴らした。
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