クラブBootleg

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 久世は一口すする。強い。ソーダで割っているのに、先程ロックで飲んだブランデーよりもアルコールが強かった。 「全部飲め。夜に備えろ」  西園寺のその言葉の真意はわからなかったが、生田のことを考えて参っていた久世は、言われるがままに飲み干した。  西園寺はそれを見て笑みを大きくすると、今度はウォッカだけを並々と注いだ。 「それ飲んだら少しはシャキッとするだろ。晶は?」 「……夕食を摂るの?」 「ああ、そうだった。透は?」 「……()いていない」 「じゃあ、行ってから考えるか?」  それを聞いて、晶は立ち上がった。 「バスルームを借りる」 「着替えは?」 「ある」  それだけ言って、晶はバスルームへと消えた。 「無愛想だろ? シラフの時だけだ。酔うと面白い」  西園寺がいつもの含みのあるニヤニヤとした笑顔を久世に向けて言った。  久世は返事の代わりにウォッカを飲み干した。  飲んだ瞬間に頭にガツンとくる。頭をハンマーか何かで叩かれたようだ。目の前がチカチカとして、倒れそうになる。 「おっと……」  西園寺が久世を支える。 「効くだろ? もっと飲め。お前は酔ってから行ったほうがいい」  西園寺は言いながら、再びウォッカをグラスに注いでいる。 「……どこへ行く?」 「クラブだ」  西園寺はそう言うと、自分もグラスを開けた。
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