クラブBootleg

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 三人は西園寺家の使用人が運転するベンツに乗って、新宿の方へと向かった。  晶は再び衣装を変えていて、今度は薄い紫のTシャツと革のショートパンツに黒のロングブーツを身に付けている。身体にピタッとフィットしているその姿は、細身ながらも女性的なシルエットが露わに出ている。  久世の着替えは間に合わなかったため、西園寺の弟の服を借りることになった。西園寺は久世よりも背が高く、身体も筋肉質のため、同じく鍛えている久世でもさすがにサイズが合わない。黒のサマースーツに紺色のシャツだった。  西園寺の弟はイギリスに留学している大学生で、久世はまだ中学生だった頃の姿しか記憶に残っていない。いつの間にか自分が着てもちょうどいいサイズを着る大人になっていたのかと、時の経過に感慨深い気持ちになった。  到着したのは、新宿駅からだいぶ離れた場所にある商店街の一角で、こんなところにナイトクラブがあるようには見えない。  降車して歩き始めた西園寺と晶を追うと、二人は建物の隙間にある、黒くて細長い木製のドアの前で立ち止まった。  ここが目的地でなければ、昼でも目に留めないような何の変哲もない地味なドアで、周りに灯りひとつなく、ただ商店街にある街灯の光で薄っすらと輪郭が見えているだけだ。
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