クラブBootleg

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 西園寺がポケットから取り出したカードのようなものを、そのドアの中心部にかざす。すると小さくカチッと音がして、ドアが数センチ動いた。  取っ手と言えるのかわからないような、ドアに申し訳程度に付いている突起を西園寺は無視して、ドア自体に手をかけてそれを開く。  中はブラックライトに照らされて、壁一面に落書きというのかアートというのか、様々なものが描かれている中に、下へと続く階段があった。  二人は当然のように階段を下りていく。久世はこういった隠されたクラブのような場所へ来たのは初めてだった。5年前まで西園寺と付き合っていたときも、普通のバーやクラブはあったが、こういった場所に連れて来られたことはなかった。  下りていくと、ビートを刻む重低音がドアから漏れ聞こえているばかりか、ドンドンと振動まで響いている。ドアを開けると、いわゆるクラブの名にふさわしく、色とりどりの照明の中、何十人もが自由に身体を動かしている。  西園寺はその人達の間を縫うようにしてバーカウンターまで行くと、指を三本立てて見せるだけで何も言わず、そのまま奥の方へと歩みを進めた。  地下とは思えないほど広い店内の奥はステージになっていて、綺羅びやかな衣装を身に着けた女性が数人ほど、身体をくねらせて踊っている。  そのステージの横に、左右に三つずつ扉があった。  西園寺は迷うことなくその一つを選び、ノックもせずに中に入っていく。
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