クラブBootleg

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 中には男性が二人座っていた。久世よりも若いか、同じくらいの年齢に見える。一人が煙草を吸っている。  部屋は十畳ほどの広さがあり、思ったよりも広い。深々と座れる三人掛けのソファが二つL字型に並んでいて、その前にガラス製のテーブルが鎮座している。そこには数本の酒瓶と何個かのグラス、鉄製の灰皿に錠剤の入ったピルケースと、煙草が置かれていた。  床はダンスフロアと同じ黒のタイルが敷き詰められ、壁は赤紫色のベルベットのカーテンが全面にかけられている。その向こうに何があるのかはわからない。 「ああ、悠輔、晶」  一人が笑顔で片手をあげた。 「マモル、それは消せ」 「ああ、もしかして前の男? あの噂の?」  マモルと呼ばれた男は煙草を灰皿でもみ消しながら、ニヤニヤとした笑みで久世を見た。 「ミキは?」  ソファの一つに腰を下ろした晶は、そう聞きながら煙草に火をつける。 「ミキは残業中~」  マモルではない方の男性が横に座った晶にそう言うと、晶は舌打ちをした。 「仕事なんてやめればいいのに」 「食っていけなくなる。晶にいつ飽きられるかわかんないんだから」 「そういうことを言うな」  晶はじろりと睨んだ。  空いているソファに西園寺は腰を下ろして、紹介をする。 「透だ。こいつはマモル、こっちはヒサシ」
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