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久世は言い返す言葉が見つからず、雰囲気にも呑まれて、受け取ったその酒を一気に煽った。
「ああ、いける口だね」
マモルはそう言ってまた注いだ。
「ねえ悠輔、彼とは別れてるんでしょ?」
「そうだが、今こいつは傷心でな。新しい男はまだどうかな?」
西園寺が煙草を持った指で久世を指しながら答えた。
「ええ! こんなに可愛いのに。見た瞬間に気に入ったよ」
「そうだろ? 俺が育てた」
「この子を振るなんて信じられないな」
「……その話はするな」
「おお、マジで悠輔のお気に入りなんだ! じゃあ僕は今度でいいよ。隣も空いてるし、そっち使ってもいいよ」
「だめだ」
話を聞いていたのか、スマホを操作していた晶が割って言った。
「おいおい、ミキはまだあと二時間は来ないと思うよ。遠いんだから」
「……迎えに行く」
「だめだ。離れるな。女を迎えに行くなんて絶対にだめだ」
西園寺が言う。
晶はため息をつくと、酒を一気に飲み干した。
「つまんない。踊ってくる」
晶が出ていくと、ヒサシも後を追った。
「じゃあ、僕も踊ってくるよ。悠輔、あれはいいんだろ?」
「あ? まさか……あぁ……マモル」
西園寺は驚いた表情のあと項垂れた。
久世はそれを最後に記憶が途切れた。
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