クラブBootleg

8/13
前へ
/217ページ
次へ
 久世は気がつくと、見覚えのない部屋のベッドの上だった。  頭がガンガンする。強い酒を何度も煽った後の二日酔いだとすぐに思い至る。  服も下着も何も着ていない。横には西園寺が、これまた全裸で眠っていた。  久世は記憶を辿ろうとしたが、何も思い出せない。  怪しげなクラブの個室に入って、酒を飲んだことまでしか覚えていなかった。酒だけでこんな風になるとは思えないが、なぜなのか理由がわからない。  ハッとして意識を集中させると、下半身に馴染みのある違和感があった。全裸で寝ていたことも加味すると、西園寺とまた寝てしまったということか。この違和感はそれ以外に考えられない。二度と会わないと言って別れたはずなのに……。  記憶にある限りの会話を思い返して、相手が西園寺だけならまだマシか、と考えたことでさらに気落ちした。  のろのろと起き上がり、近くにあったバスローブを羽織ると、おそらくバスルームであろうドアの中へ入った。  栓をひねり、熱いシャワーを頭からかぶる。  雅紀がいるのに他の男と寝てしまった。  しかも相手は西園寺だ。  雅紀の元へ飛んでいきたいのに、俺は何をしているのか。  そう考えて情けなくなり、自分自身に対する怒りが抑えようもなく、壁を殴りたくなった。 「……別にいいけど、挨拶なり普通しない?」  久世は飛び上がるほど驚いた。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

185人が本棚に入れています
本棚に追加