誕生日

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 生田は何も答えず、ただ久世に力のない笑みを向けた。  そしてそのまま久世の方へと寄り掛かるようにして、抱きついた。  久世はすぐに反応し、受け止めるように抱きとめた。 「透、愛してるよ。誕生日おめでとう」  生田が久世の耳元で囁いた。  そして久世を壁に押し付けると、キスをした。  久世はいきなりのことで驚いたが、抱き合ったまま素直に受け止めた。軽いキスではなく、深く相手を貪るようなキスだった。生田の舌が絡みつく。そのまま最後までしたいときに生田がいつもしているように、唇をついばむようにしながら、何度も久世にキスをして、そのまま顎へ首へと進んでいく。  久世は戸惑った。見るからに疲弊しているであろう生田が、帰宅してすぐに、しかもこんなところで求めてくるとは思わなかった。  しかもいつもとは様子が違っている。酒には強いはずの生田が、明らかに酔っているのだ。  久世は何があったのかと心配で、受け入れることに躊躇っていた。  生田はそんな久世の反応には構わず、久世のジャケットを肩から脱がせ、シャツのボタンを開けていく。  久世を壁に押し付けたまま、荒々しすぎない程度に激しく、猛った欲望をぶつけるかのような熱を向けていく。  久世のシャツのボタンを全て外し、生田は唇で吸い付きながらも舌で上半身を愛で、舐めていく。久世の全てを味わいたいとでも言うように、ゆっくりと丁寧に。
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