クラブBootleg

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 画面を見ると、大学時代からの友人だった。彼は生田のことを知っているばかりか、幼馴染だ。久世は通話ボタンを押した。 「はい」 『あ、透か?』 「なんだ?」 『え? いや、雅紀が……』 「ああ、少し前にお前に電話をかけたが、まだ帰ってこない。何か聞いたか?」 『……俺もさっき聞いたばかりで……』 「ああ。それで?」 『お前ホントに大丈夫か?』 「大丈夫ではない。続けてくれ」 『ああ。宏紀が言うには、その……結婚するかもって』  西園寺の言っていたことは正しかった。久世はそうかもしれないとは思っていても信じたくなかったから、他の理由であることを願っていたが、やはり事実だったようだ。 『おい、本当に大丈夫か? お前はその……知ってた?』 「……いや。連絡も取れないままだったから、探していた」 『ああ……そうか。宏紀も連絡が来たのは昨日だったみたいだから、久世くんは知らないままかもしれないって、心配してて……』 「……そうか」 『お前、今日休み?』  その問いで久世は今日の予定を思い返した。西園寺議員に西園寺宅に詰めていろと言われていたから休みだろう。 「ああ」 『……青森行くか?』  久世は返答に迷った。 『あ、俺も行くよ。久しぶりに帰省だ』
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