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「お前、御曹司じゃなかったっけ? 久世秘書官……」
今度は俊介がキョロキョロと見渡しながら言う。
久世は、ようやく落ち着いたという表情で、再び座布団の上に腰を下ろした。
「では行く前に、どうするかを考える」
「は? ……ああ! 彼女の家に行く前にってことだな」
俊介はいきなり話が戻って、慌てて意識を立て直した。
「まずお前が行く」
「いや、俺は帰省してるだけだから」
そら笑いをしている俊介を久世が睨んだ。
「……はい。俺がね。はいはい。お前に何も連絡しないってことは、いきなり行かない方がいいわけだしな。てか、そのために来たんだ俺は。ははは」
俊介は緊張してか、再びそら笑いをした。
「俺もついていく。もしマンションに入れてもらうことになったら、俺も一緒に行く」
「え! もし彼女さんしかいなかったらどうするんだ?」
「……彼女は……木ノ瀬さんは、俺のことを知っている。雅紀が俺達のことを話していなければ、ただの友人だと思っているはずだ」
「ああ、じゃあ、雅紀がいるときよりも彼女さんとだけ会ったほうがいいかもしれない」
「そうだ。しかし雅紀もいる可能性はある。だからまずはお前だけが顔を出す」
「わかったわかった。じゃあ、グズグズしてないで行こう」
俊介は立ち上がった。
二人はアパートの外に出た。
「場所はどこだ?」
俊介が部屋の鍵をかけながら聞く。
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