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「雅紀のお母さんが入院されていた病院の近くだ」
「あー、じゃあバスだな。こんなところじゃタクシーなんて捕まらん」
「……バス……」
「お前、もしかして初めて?」
二人はバスに乗って病院の一つ手前の停留所で下りた。
「いきなり札を入れるなよ! 崩してから入れるんだよ。これだから金持ちは。しかも万札……」
「悪い」
「230円、貸しな」
5分ほど歩くと、見覚えのあるマンションが見えた。エントランスに入って、オートロックのある場所へ向かう。
「……部屋の番号は?」
久世は答えない。
「マジかよ! えー! どうすんだよ……宏紀なら知ってるか? いや仕事中か。えー? まさか一軒一軒鳴らすわけ? 嘘だろ?」
俊介が騒いでいると、外から女性が入ってきた。後ろで二人が終わるのを待っている。
久世が譲るために身体を横にして後ろに下がると、その女性が声をかけてきた。
「あれ? 久世さん?」
久世は女性の顔を見た。みどりだった。
お腹が大きい。巨大なスイカでも服に隠しているかのように丸く突き出ていて、体重を支えるために後傾の姿勢になっている。
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