青森

4/20
前へ
/217ページ
次へ
「雅紀のお母さんが入院されていた病院の近くだ」 「あー、じゃあバスだな。こんなところじゃタクシーなんて捕まらん」 「……バス……」 「お前、もしかして初めて?」  二人はバスに乗って病院の一つ手前の停留所で下りた。 「いきなり札を入れるなよ! 崩してから入れるんだよ。これだから金持ちは。しかも万札……」 「悪い」 「230円、貸しな」  5分ほど歩くと、見覚えのあるマンションが見えた。エントランスに入って、オートロックのある場所へ向かう。 「……部屋の番号は?」  久世は答えない。 「マジかよ! えー! どうすんだよ……宏紀なら知ってるか? いや仕事中か。えー? まさか一軒一軒鳴らすわけ? 嘘だろ?」  俊介が騒いでいると、外から女性が入ってきた。後ろで二人が終わるのを待っている。  久世が譲るために身体を横にして後ろに下がると、その女性が声をかけてきた。 「あれ? 久世さん?」  久世は女性の顔を見た。みどりだった。  お腹が大きい。巨大なスイカでも服に隠しているかのように丸く突き出ていて、体重を支えるために後傾の姿勢になっている。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

185人が本棚に入れています
本棚に追加