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「あ、こんにちは……」
久世はおどおどとしながら答えた。
「もしかして雅紀に会いにいらっしゃったんですか? あれ、雅紀から聞いてなかったけど。内緒にしてたのかな?」
「いや、私共がいきなり……」
「え、サプライズ?」
みどりはにパッと華やぐような笑みを浮かべた。幸福そうで、穏やかな笑みだ。
「どちらにせよ、来てくださったんですよね? 片付いていませんが、まずは上がってください」
みどりはそう言って、オートロックを解除した。
自動ドアが開いて、みどりは歩いていく。
久世と俊介は、親を見失ったひな鳥のように狼狽えて、ドアを通ろうとしない。
見かねたみどりが振り返って言った。
「どうぞ」
「……ありがとうございます」
二人はうつむいたまま、おずおずと後に続いた。
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