青森

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「驚きました。雅紀が土下座なんてするとは思いませんでしたから。やめてと言っても『結婚を承諾してくれるまではここを動かない』なんて言うものだから、その、そこまで言うならいいかなって。……それからここで一緒に暮らしているんですけど、すごく優しくて、前とは違ってちゃんと私のことを好きでいてくれてるって感じられるし、今の雅紀なら大丈夫かなって……」  久世は落ち着かない様子で、うつむいたまま額に拳を当てている。  みどりは気恥ずかしそうに笑って続ける。 「雅紀には内緒にしてください。疑ってたみたいなことは言わないでくださいね。今はちゃんと夫婦としてやっていけるって思っていますから」 「……おめでとうございます。僕たちも嬉しいです。雅紀くんが結婚することになって……それに、お子さんも」  俊介が精一杯笑顔を作って言う。 「ありがとうございます」  みどりは心から幸福そうな笑みでお腹をさすった。 「いつ生まれるんですか?」 「予定日は来月頭です。もういつ産まれてもいいので、毎日散歩に出ているんです。さっきもその帰りで」 「そうでしたか。あの、雅紀くんは……」
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