青森

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 生田はみどりのマンションへと帰った。 「ただいま」  そう言って靴を脱いでいると、不安そうな表情を浮かべたみどりが、リビングから出迎えに来た。  生田はみどりを気遣おうと、優しく肩に触れ、こめかみのあたりにキスをした。  そのまま肩を抱いて、リビングへと二人で歩いていき、一緒にソファに腰を下ろした。 「俊介は……あの幼馴染の……俊介は、実家に顔を出す予定の時間だからって、そっちに向かった。少し話をしてきたんだ。遅くなってごめん」 「いいけど……連れてくればよかったのに。そんなに久世さんに会いたくなかったの?」  生田はそこで微かに震えたが、みどりは気がつかなかった。 「……そうなんだ。透は何か言ってた?」 「え、うん。大喧嘩したから出ていったんだろうって」 「……そう。東京でね。縁を切るレベルの大喧嘩をしたんだ」 「うそぉ!? 雅紀がそんなにキレることあるの?」  生田はみどりに笑顔を向けただけで答えない。 「マジ? 信じらんない。私にはキレないでね」  生田は笑い声をあげた。 「みどりにそんなことはしないよ。大丈夫。男同士の喧嘩ってやつだ」 「ふうん。それより、もう久世さんのこと怒ってない? なんか、戻ってきたら連絡してくれって名刺もらったけど」  生田はそこで一瞬笑顔が曇った。みどりは名刺を見ていて気づかない。 「あ、なんだっけ? 雅紀の機嫌が直ったらって言ってたかも」
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