もう一人

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 翌朝目覚めると、ここ数日荒れっぱなしだった部屋を片付け始めた。  生田のものを見つけると、丁寧に分類してプラスティックケースに入れた。荷物を取りに戻るだろうから、わかりやすくしておくためだ。  二人で一緒に買ったものは、迷った末に不要ならば置いていくだろうと考えて、生田の荷物のところに全て入れた。  元々持ち物は少ない二人だったので、朝早くから始めた片付けと掃除は、昼前には終わっていた。  久世は次の行動が思いつかない。  大学院に在学中に生田と出会って、卒業して就職する間も一緒にいたのだ。休日なんてなかった院生を終えた今、一人きりで暇をどう潰すかなんて考えたことがなかった。  数分考えたのち決意を固めると、荷物をまとめて部屋を出た。  マンションを出て、久世は実家へと帰った。  離れの部屋に落ち着くと、ソファに座って電話を掛ける。土曜日だから今なら大丈夫だろう。 『ああ、久世さん。ごめんね、ちょっと待って』  雅紀の兄である宏紀に電話をかけたのだ。ゴソゴソと物音がしてから、再び声が聞こえてくる。 『ごめんごめん、運転中でね。今停めたから』 「すみません。掛け直しましょうか?」 『いや、いいんだ。一人だから、今の方がいい』 「……ありがとうございます」 『電話をもらっていたのに、俊介に任せてしまって申し訳ない。その、青森へ行ったって? 今も青森に?』 「いえ。私だけ昨夜のうちに帰ってきました。今は東京です」 『……そうか。雅紀には会えた?』 「いえ……」 『そっか……』  そこでしばらく沈黙が下りた。
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