地獄が

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 それと同時に、二週間前にした決意に対する疑問が次々と浮かんできた。  結婚をするからと俺の元を去った雅紀と、二度と会わないようにしようと決めて、忘れようとしていた。  しかし、それをして何になる? 以前も同じようなことがあったが、その決意に意味はあったか?  別れたからと言って、顔を見るくらい悪くないだろう? 雅紀は会いたくないと言ったかもしれないが、俺は言っていない。思ってもいない。  俺は会えるだけでいい。少しでも顔を見れるだけで満足できる。  溜まっていた鬱憤が噴き出したかのように、生田に会いたいという欲求が、久世の頭を支配した。  その欲望が理性を押し(とど)め、会わなければ落ち着くことができないとまで思い始めた。  久世は疲労と精神的なストレスで、抑えつけていた理性が吹き飛んでしまった。  会いに行かなければならないと、そう熱に浮かされたように、早く青森へ行かなければと、そう急かされてでもいるかのように気持ちが(はや)った。  久世はタクシーの運転手に、空港へ向かうように告げて、着の身着のまま青森へと向かうことにした。  まだ最終の便があったため、空港へ着くとそれに飛び乗った。  飛行機の中でも興奮は冷めやらず、思い立ったときのまま、頭のネジが外れたような状態だった。  空港へ着くと、すぐにタクシーに乗ってみどりのマンションへ向かう。
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