天国が

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天国が

 二度とこんな朝を迎えることはないと思った。  目を覚ますと透がいる。すやすやと眠る、愛する男の穏やかな寝顔を独占する喜びを、また味わうことができるとは思わなかった。  生田は久世のこと以外は何も考えないようにして、今のこの幸せを噛み締めていた。  見ているだけでニヤけてしまう。思い出すだけで悶えてしまう。また透と会えて、声を聞くことができて、触れ合うことができたのだ。  生田は寝ている久世にキスをした。  いつもこうやって起こしていた。目覚ましよりも15分早く。  朝、透を昂らせることが好きだ。僕を感じて一日を始めて欲しい。日中離れている時も、朝のことを思い出して僕を想って欲しい。  できるなら僕のことだけを考えていて欲しい。透の全ては僕のものだと思いたい。  頭の中も身体も、声も心も全て、僕のものだ。  そう考えながら、毎朝こうやって当たり前のように幸福を味わっていた。  生田は再びキスをした。今度は軽くではなく味わうやつだ。久世も目覚めて応えてくる。舌を吸い、唇をついばむ生田に応えて、久世は生田の髪を撫でる。  生田はそのまま久世の身体にも吸い付いていく。  ああ、透。この身体が好きだ。  僕は透の身体じゃなきゃダメなんだ。  生田は久世の全てを味わい尽くそうと、キスで全身を愛撫していく。一つ一つ丁寧に、抜かりがないようにゆっくりと、細かいところまで。  久世がそれに反応するたびに生田は笑みをこぼす。  自分のキスで感じる久世が愛しくてたまらない。
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