誕生日

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 料理上手な生田による、久世にとっての豪華なディナーが始まった。久世の好きなものばかりがテーブルに所狭しと並べられ、どれから食べていいやら迷うほどだ。  生田は和食が得意で、今日の料理も肉じゃがに魚の煮付け、ぶり大根にだし巻き卵と、その他にも色々な副菜が少量ずつ並んでいる。それに合わせて酒は日本酒にしたようで、久世の好きな八海山が熱燗に冷と、それぞれ準備されていた。  久世が美味い美味いと、料理にパクついていると、改まった調子で生田が姿勢を正した。 「透、オメガとは天と地の差があるけど……」  そう言って、生田は久世に包装された箱を差し出した。 「……ありがとう」  久世はそれをおずおずと受け取る。 「開けてみて」  生田は笑顔を浮かべながらも緊張した様子で言った。  久世が箱を開けると、中には革の財布が入っていた。  手に持ってみると、軽くて丈夫そうだ。作りがしっかりしている。しかしどこにもブランドロゴがない。  その様子をニヤニヤと眺めていた生田が言った。 「僕の手作り」  久世はそれを聞いて顔を上げた。 「……どう? ヘタクソだけど、悪くないと思うんだ」  久世は感激して言葉にならなかった。しかし生田を不安にさせないようにと急いで言葉を絞り出す。 「……ありがとう」  胸が詰まったようなその声は、言葉以上に久世の気持ちを物語っていた。
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