天国が

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 それに気がついた久世が、普段ならば絶対にしないが、このままではいけないと奮い立った。 「すみません、私は無関係の者ですが、敢えて入らせていただきます。須藤さんは、木ノ瀬さんとお付き合いがあったことは否定されていらっしゃらないですね。雅紀は、浮気を疑っているわけではありません。ただ含みのない質問として、お話を伺いたいだけなのです」 「いやぁ、その……」  まだ言い淀んでいる須藤に、生田は声を荒げた。 「何をしに来たんですか? こちらが伺っても何もご説明してくださらない。みどりと同僚だと言っておられましたが、入院していることを知っていて、なぜこの自宅の方へ来たんですか?」  その物言いに須藤は慄いたが、それで喝が入ったのか、今度はちゃんと答えた。 「すみません。みどりにもこういう優柔不断な態度はやめろとよく言われておりました。いや、こんなことを旦那さんに言うなんて怒られます。あ、いや……。あ、それでですね、えーっと、なんだっけ? あ、そうそう、みどりにプロポーズをして、受けてもらえたのですが、その、婚約破棄になったのが先月なのですね。ですからまだ愛しておりまして、それで心配になったわけです」  生田と久世は驚きすぎて言葉を失った。  生田は改めてこの須藤を観察した。
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