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「それじゃあ、須藤さんとはなぜ婚約破棄になったんですか? 僕が来たときにはもう別れていらっしゃったようですけど」
少しずつ生田の声が怒気を帯びている。
「それを突かれると弱いんですけどね。いわゆる飲んだ席でのハニートラップというやつですよ。もちろん二人きりにすらなっていません。ちょっとキスした程度で。でもみどりは許してくれませんでした。激怒して、聞く耳も持たない」
生田はまた驚いた。
みどりがキスをしたくらいで激怒!? そんな女じゃない。みどり違いなんじゃないか?
「ヤキモチ焼きでね。……でしょう?」
須藤は、生田の反応を見て、生田がヤキモチなど焼かれたことがないのだと確信して、勝ち誇ったような顔で言った。
生田は嫌悪で顔を歪めた。
惚れた女の夫なのだから、相手にして面白くないのはわかるが、それにしても態度が失礼過ぎないか?
なんなんだこいつ。
久世は生田の顔を見て限界だと感じて、再び割って入る。
「須藤さん、お話は理解しました。木ノ瀬さんは入院されていますが、大丈夫なようですから、ご安心いただけたと思います。今日のところはこれ以上お話しすることはないように思いますが」
「……そうですね。また夕方お伺いします。私は仕事を抜け出してきておりまして、今はあまり時間がありませんので」
須藤はそう言って立ち上がった。
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