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「夕方?」
生田が苛々とした様子を隠さずに言う。
玄関へ向かいかけていた須藤が立ち止まって振り向いた。
「……生田さん、婚姻届は出しましたか?……出していないようですね。そのお顔では。そうですか。いや、予想通りです。あなたはみどりが宿している子の父親でありながら、未だにみどりと結婚する意思がない。僕は実の父親ではないけれど、子の父親になる覚悟もあるし、なによりみどりを愛している。みどりとの婚姻届は僕が提出しますよ」
須藤はそう言うと、返事も待たずに急ぎ足で部屋を出ていった。
生田は怒りで震えている。
「何あいつ……大嫌いだ、あーいうやつ」
久世は生田のその様子を見て、笑ってはいけないのに可笑しくなってしまって、それがバレないようにと顔を背けた。
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