訪問者

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 久世は家主が不在のときに出るわけにはいかないと思って無視を決め込む。宅配便なら宅配ボックスを利用するだろうし、出ない方が無難だと、そう考えたときにもう一度鳴った。  それでも無視をしているとさらに鳴ったため、気になった久世はモニターを見に行った。  そこにはなんと瑞稀の姿があった。  なぜここに!?  なぜ俺の居場所がわかった? なぜこの場所を知っている!  久世が反応に迷っていると、モニターから瑞稀の姿が消えた。  その2分後、今度は玄関のインターホンが鳴る。  入居者と一緒に自動ドアを入ってきたのだろうか。  久世は再び無視をしていたが、間断なく鳴り続けるので、諦めてドアを開けた。 「透さん!」  瑞稀は満面の笑みで久世に抱きついた。 「会いたかった!」  久世は瑞稀を 離そうとするが、瑞稀は離れない。 「なぜここにいるんですか?」 「透さんに会いに来たの」 「帰ってください」 「わざわざここまで来た婚約者に、言う台詞?」  玄関を開けたまま、通路でそんなやり取りをしていると、二つ隣の住人がドアを開けて通路へ出てきた。  久世はそれに気がついて、仕方なしにと瑞希を部屋へ入れた。  瑞稀はニコニコと上機嫌な様子で、招きを受けた。  入るなり瑞稀が部屋を見渡しながら言う。 「喉が渇いたなぁ」 「……勝手にはできません」
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