誕生日

8/8
前へ
/217ページ
次へ
 生田はホッとした笑顔を浮かべて、熱燗の入った銚子を手に持つと言った。 「飲もう!」  久世はお猪口を手に取り、その杯を受ける。 「ありがとう、雅紀」 「ん? いま『愛してるよ、雅紀』って言った?」 「……言った。愛してるよ」  歯を見せて愉快そうに笑う生田に対して、久世は顔を赤らめて視線をお猪口に集中させていた。  たらふく食べた後、二人はベッドに寝転んで、色々と話をしたり互いを軽く愛撫したりと、寝入るまで仲良く過ごした。  翌朝になって、久世が目を覚ますと、隣には誰もいなかった。  久世は飛び起きて、部屋の中を隅々探す。  今日は二人とも休日のはずだったが、急遽仕事へ行くことになったのだろうか。それともぷらっとコンビニにでも出かけたのか。  スマホをチェックして連絡がないかを何度も確認した。久世からも電話をかけたしLINEもした。  しかし、何時間経っても生田は戻らず、連絡もつかないままだった。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加