訪問者

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 それを見た久世は慌てて立ち上がり、生田の元へ駆け寄った。そして生田の両腕を掴んで、廊下へと後退させる。 「……東京の知り合いなんだ。玄関口でわめくから、入れてしまった。申し訳ない」 「は? 透の? なんでここにいるの」 「俺もわからない。突然来たんだ。なぜここを知っているのか、なぜ俺が来ているとわかったのかも、何もわからない」 「……知り合いってどういう知り合い?」 「婚約者です」  いつの間にか瑞稀も廊下へ来ていて、ハッキリとした口調で生田を見据えてそう言った。  その時、生田の顔色が変わったのを見て、久世はハッとした。  この二人は相性が悪いかもしれない。  口論になったら止められるだろうか。  そう考えながらも、もしそうなってしまった場合はなんとか止めなければ、と覚悟をした。
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