遭遇者

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 久世は大きなため息をつくと、瑞稀の横をすり抜けるようにして再び歩き始めた。 「どこに行くのよ!」 「……どこでもいい」 「帰りましょうよ」  再び同じような問答を続けながら幹線道路沿いの歩道を歩いていくと、久世はビルから出てきた人物に目を留めた。  見覚えのあるその人物との遭遇に驚いて久世は立ち止まると、瑞稀も、そしてその人物も久世の動きに気がついて同じく足を止めた。 「……みーちゃん」  須藤が見開いた目を瑞稀に向けてそう言った。  瑞稀は顔色を変えて、隠れるようにして後退りをする。  久世は須藤の反応を見てさらに驚き、須藤と瑞稀の表情を交互に伺った。  瑞希は久世の腕に手を巻き付けて、背後に回って身を隠そうとする。 「みーちゃん!」  須藤は久世の存在には目もくれず、瑞稀だけを見つめたまま、近づいてくる。  久世は咳払いをして、須藤の注意を引く。 「須藤さん、お仕事中ですか?」 「はっ? あ! あれ? えーっと、……川瀬さん?」 「……久世です」 「あー、久世さん! これは失礼」  そこで須藤は瑞稀が久世の腕に手を巻き付けていることに気づいた。 「えっ? みーちゃん……久世さんとどういう関係?」  みーちゃんはそれには答えず、久世に耳打ちする。 「透さん、タクシーに乗ろうよ」
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