遭遇者

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「みーちゃん、どこにいたの? なんで連絡取れなかったの? 心配してたよ」 「透さんっ」  瑞稀は小声で呼びかけて、久世の袖口を引っ張った。 「みーちゃん、僕はみーちゃんに何かを求めているわけじゃないんだ。ただ、彼女に何か言ったんじゃないかって、それを聞きたかっただけなんだ。何か、誤解を与えるようなことを。僕たち、ただの相互だろ? オフで顔を合わせただけじゃないか。しかもたったの数時間。それなのに、みーちゃんと会った次の日に浮気したって詰め寄られて結局振られたんだ。あの日のメンバーで僕の連絡先を知っていたのはみーちゃんだけだから、何か知らないかと思って探してたんだよ」  久世は事情を察して、第一印象の悪かった須藤に対する意識を変えた。 「……須藤さん、お仕事中ですか? お時間があれば、どこかお話のできるところへでも……」  須藤はハッとして久世を見た。 「久世さん、ありがとうございます。こんなところでいきなり失礼致しました。お気遣い痛み入ります。お言葉に甘えたいところなのですが、午前に職場を抜け出したのと夕方の約束のために、急いで仕事を片付けなければなりません。ですから今はちょっと……」 「承知しました。私が櫻田さんに話を伺ってみますので、お時間ができましたら、こちらにご連絡をいただけますか?」  そう言って名刺を手渡した。
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