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「悠輔が何の用なんですか」
「何の用って」マモルは吹き出した。
「悠輔パパに言われてるでしょ? ダメだよ浮気しちゃ。透の相手は晶でしょ? ……それにしても、元彼に会いに行くのに婚約者と同伴だなんて、透は変なことをする人なんだね」
「……勝手に来たんです」
「どっちでもいいけど、事実じゃん。てか何で敬語なの? あんなこともそんなこともしたのに」
久世はそれを聞いて、顔をしかめて視線を逸らした。
「ああっ、酷い! あんなに情熱的だったのに。あ、思い出すためにやっぱり寄っていく?」
「……覚えていないので」
マモルは驚いた顔をした。そして得心がいったという表情を浮かべて言った。
「そうか、透は初めてだったんだね」
「何のことですか?」
「あーー、えーっと、……悠輔に聞いて」
マモルは目を泳がせながら誤魔化すような笑みでそう言うと、会話は終わりといった様子でスマホを操作し始めた。
久世は朝から色々なことがありすぎて疲れていたので、それ以上の追求はせずに、座席のシートに身体を預けた。サイドウィンドウを眺めながらウトウトとする。
そしてそのまま目的地に到着するまで眠ってしまった。
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