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久世は訝しむような目で晶を見ていたが、西園寺は晶の姿を隠すようにと久世へ二歩近づいた。
「お前のあれは櫻田家の娘ではあるが、娘は娘でも妾の子、婚外子というやつだ。養女になったのは一昨年くらいか? 援助はしていたみたいだからまともに育ってはいるが、本物ではない。お前の親父か祖父さんかは知らないが、なんであんな女を選んだんだ?」
「俺が知るか」
「お前は晶と結婚しろ」
「……俺は誰とも結婚しない」
「それは無理だ」
その時、晶の声が大きくなった。西園寺と会話をしている間も晶とマモルがやり合っている怒号が聞こえていたが、会話を止めるほどではなかった。それが気になるくらいに大きくなっている。
「ミキに会いたい!」
「そのうち来るよ。前にも来ない時期があったじゃん、たかが二週間くらい……」
「電話も繋がらないし、LINEも来ない」
「今夜もBに行こう。いるかもよ?」
「いないよ。私に飽きたんだ!」
「そんなわけないっしょ。どこに晶を振る人間がいるのさ」
会話を聞いていた西園寺が、そこでチラリと久世を見た。
久世は、振るも何も政略結婚の相手というだけだろ、と睨み返したが、西園寺は既に視線を逸らしていた。
「わかったわかった。今夜は俺も行く。タクローに聞いてやるから」
西園寺が大声で二人に割って言うと、晶が言い返す。
「タクローなんてずっと来てないし、ミキのことを知るはずがない」
「知っている。なんなら連れてきてもくれる。俺が頼めばな」
晶はその言葉で冷静さを取り戻した様子だった。
「……わかった」
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