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西園寺が晶たちから久世へと視線を移す。
「そういうことだから、今夜もあそこだ。つきあえ」
久世はうんざりした顔をしてみせたが、言い返さなかった。
その場にいた四人は、西園寺邸の離れで食事を済ませた後、クラブBootlegへと向かった。
晶とマモルはまっすぐにお馴染みの個室へと向かったが、西園寺は別の個室に入って行った。
久世は二週間も通っていて場馴れしていたので、個室には入らずにフロアで酒を飲むことにした。
晶ともマモルとも話したくなかったからだ。
15分ほど経って別の個室から出てきた西園寺が、久世に気づいて近寄ってくる。
「俺の赤ずきんちゃんは、喰われるのを待っているのかな?」
「誰なんだ」
「ミキか? タクローか?」
久世は片眉を上げた。
「……ミキは知らん。部屋に何度か来ていたようだが、俺は女になんて興味はないからいちいち覚えてなどいない。晶が熱を上げているようだが、大した女じゃないだろ。気にするな」
「俺には関係ない」
「ほう。妻の愛人を気にしない度量があるのか」
久世は西園寺を睨む。
「……タクローは……ああ、来た。早かったな。まあ、近くにいるから当然だが。おい! タクロー!」
西園寺が久世の背後の方へ片手を上げて、大声でそう呼びかけた。その方向へ久世は振り向いた。
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