1 僕と彼の関係

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食べ終わり空になった器をシンクの所に持って行きながら続ける。ピタッと動きを止めた彼は「何か用事があるの?」と聞いてくる。珍しく向こうから会話を繋げてきた。玄関近くに置いてあった帽子を手に取り被りながら「ちょっとね」と返す。 「そんなに遅くならないから。晴也も今日はバイトだろ?僕ものんびりしてるから好きに動いて」 「....分かった。気を付けて」 それ以上は何も言わずに黙々とうどんを食べ始めた彼。ふぅ、と一息ついた僕は適当に着替えて「行ってきます」と家を後にする。パタンと完全に閉まったタイミングで扉にもたれ掛かり、もう一度溜め息を吐いた後、ぼーっと目の前に広がる青空を見つめる。 必要最低限しか話さない日々。僕に対する贖罪を抱えて僕の側で生きる番との静か過ぎる毎日。 これからの事を想像するだけで退屈そうだ。 でも、Ωの幸せはαと結婚する事だし...こうなる事は前から分かっていた筈だ。それでも僕がこの日々を受け入れた。.....まぁ僕の場合、あいつじゃなかったら結婚しなくても死ぬ迄両親が一緒に居てくれるだろう。 (死ぬ迄か....。後何年こんな毎日を過ごす事になるんだろう) エレベーターを降りマンションを出た僕は予約している場所に向かって歩き出す。マンションから数十分、バスを使って二駅程の場所にある花屋が目的地だ。着くなり「来たよー、蘭ちゃん」と店を覗き込む。手元で作業をしていた女性が僕の声を聞くなり「ゆうちゃん!」と嬉しそうに顔を上げ、此方に向かって来る。
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