1 僕と彼の関係

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「久し振り〜!夏休み中は元気してた?」 「元気だったよ。蘭ちゃんも相変わらずだね」 笑いながら返すと、「私はいつだって元気だよ」と拳をつくる彼女、中島蘭華(なかじまらんか)は大学で知り合った友人である。実家が花屋で、バイトとして彼女も店に立っている。花が大好きで友人割引でよく花を売ってくれる。 「この前の花どうだった?」 「凄く良かった。やっぱり色があると心が晴れやかになるよ。いつもありがとうね」 「えへへ」 嬉しそうにはにかむ彼女を見て、つられて笑みが溢れる。彼女に影響されて、花が枯れたタイミングで花を買いに行くようになった。味気ない毎日で、いつの間にか花を鑑賞するのが自分の趣味になっていた。しかし、今回の購入目的は違う。 「花を買おうと思うんだ。...あいつに」 あいつとは勿論晴也の事である。 途端に怪訝そうな顔をする蘭華。「私、ゆうちゃんを傷付けた人の為に花をラッピングするの嫌だよ」と素直な気持ちを吐露する。彼女は僕と晴也の関係を知っている数少ない大学の友人の一人である。失笑しながら「正確に言うとあいつの為って訳じゃないかな」と訂正する。 「記念日...っていうか、番になった日がもう直ぐで。僕はもうとっくに許してるし、純粋に番として接していって欲しいんだ。そういう思いを込めて、これから変わる事を期待して花をリビングの見える所に飾りたい」
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