1 僕と彼の関係

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あいつが少しでも僕と本心で向き合ってくれたら。 そんな思いで今日は花を買いに来た。 はぁ、と困った様に溜め息をこぼす彼女。そして「ゆうちゃんの頼みなら断れないね」と続け、そのままバックヤードに一旦姿を消し、髪を束ながら出てきた。 「じゃあ、丁度花の水換えも終わったし早速選ぼっか。どの花にする?最近も結構仕入れてきたから色んなのあるよ」 淡い色合いのキキョウ、向日葵、クルクマ、そして──かすみ草。ふわふわと舞う様な小さな可愛らしい花が飾られていて思わず立ち止まる。 「かすみ草気になる?普通にゆうちゃんが言っていたみたいに飾るのもいいし、ドライフラワーとか切り花みたいな感じで用途も色々あるからおすすめだよ。ブーケとかめちゃくちゃ可愛く作るよ私」 インテリアとしても飾れるのはいいな。今花があるのも僕の部屋だし...少しずつこうして色を足して部屋の中を華やかにしていくのもありかもしれない。 「じゃあ...このピンクのやつがいいかな」 薄いピンクが満開の桜の様に咲き誇るエリアを指差す。ふふ、と笑った彼女は「花言葉は切なる願いだって」と揶揄う様に告げる。 「ゆうちゃんの思い、伝わるといいね」 「──うん。そうだね」 これから何かが変わる事を期待して。そんな思いを噛み締めて僕は深く頷いた。
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