1 僕と彼の関係

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「ただいま」 ガチャンと扉が閉まる音と一緒に、未だ聞き慣れない晴也の声が聞こえる。「おかえり」と玄関の方に姿を現すと、彼は驚いた様に目を丸くし靴を脱ぎながら口を開く。 「びっくりした..帰ってたんだ。出迎えなんて珍しいね」 確かに普段はこんな感じで待っている事なんてなかった。 「そうだね。ちょっと話があるから、着替え終わったらリビングに来てくれる?」 僕の雰囲気で何かを察したのか、「分かった」とだけ晴也は告げて足早に洗面所に向かう。先にリビングに戻った自分は席に着き、何となく緊張する心臓を落ち着かせる。 番を解消したい──そう一言言うだけなのに何故かドキドキする。番の解除の問題は直ぐに解決しそうだけど....いや、普段改まって話す事なんてないからかもしれない。....違うな。解除するって言ったらお金の事も絡んでくるし、この家の事だって── 「それにしても花....二人のこれからをって思いで買ったけど...」 足元に置いたままの花屋の紙袋に目線を配りながら一人呟く。今日で終わる──いや、終わらせる関係だ。この花は僕が今迄通り愛でるとするか。 「お待たせ」 そうこう考えている間に部屋着に着替えた晴也がリビングに来て、僕の前に座る。ごもる自分の様子を不思議そうに眺めながら「何かあったの?」と問うてくる。
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