1 僕と彼の関係

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「な、何でいきなりキスなんか....」 「祐樹」 名前を呼ばれ口を噤む。 寂しそうな、今にも泣き出しそうな表情。 何であんたがそんな顔をするんだよ。 僕から離れて綺麗さっぱり忘れたら自由になれるというのに。僕はもういいって言ってるのに、責任感じてずっと一緒に居ようとなんてしなくていいのに。 なんで── 「....祐樹はしたい事、好きな事、自由にやっていい。それは勿論今迄もこれからもだよ。好きに出歩いて好きに生きたらいい。たまに顔を見せてくれる程度でもいい。でも、最後にはこの家に帰ってきて欲しい」 「それは...番を解消したくないって事?なんであんたがそこ迄僕に拘るんだよ」 「それは...」 チラリと僕の手元にある紙切れを見据える。役所で貰った番の解消手続きで提出する紙。ぐしゃっと思わず力を込めたせいでシワが出来る。 「──君の事が、好きなんだ」 すとん、と底に落ちていく彼の一言。 予想していなかった告白に今度は僕が目を丸くする。好き...晴也が僕を?それって番になったから自然と意識するようになったからとか...いや── 「もしかして...今迄えっちしようとしなかったのって──僕の事が好きだから我慢していたとか?」 何となく聞いてみると、途端に頬が紅潮する晴也。うぶな反応をされ、こっち迄余計に照れ臭くなり顔がまた赤くなる。何だろう、これは。何なんだ、このむず痒い感覚。
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