2 二度目の体温※

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『もー!倒れたなんて言うからすごく心配していたのに全然連絡が繋がらなくなるから!』 「ごめんね。それ込みで蘭ちゃんに話したい事あるんだ」 『話したい事...?....ゆうちゃん今家?』 「家だよ」 彼女には病気の事もこれからの事も話しておきたい。僕の言葉に少しだけ間を空けて考え込む様子を見せた後『今ゆうちゃん家の近くのカフェに居るからそのまま家お邪魔してもいい?』と聞いてくる。今は晴也も居ないし、今迄他の人を家にあげた事が無いけど──まぁ、いいか。好きにしていいって言われたから。 そうして数十分後、彼女は家に来た。 入るなり「わ〜綺麗」と辺りをキョロキョロと見渡し、「不服だけど内装めっちゃ好み」と何故か悔しそうに顔を顰める。家を決めたのも内装を少しいじったのも晴也である。彼は綺麗好きで毎日掃除をしていて環境にも気を遣っている。 「それで、どうしたの?倒れたって事はどこか悪いんじゃないの」 頬を膨らませ怒った表情を浮かべる彼女見て、改めて、僕は死ぬんだと思い知らされた。こうして友人と一緒に話したり何処かに行ったり勉強したり。そういう事が出来なくなるんだ、大学も卒業出来ずに。死ぬってそういう事なんだ。 「──僕、死ぬんだ。蘭ちゃんには言っておこうと思って」 そう切り出して事の経由を僕は丁寧に語った。時間が無駄に長い様に感じられた。僕がゆっくりポツポツと喋り続ける中、彼女は真剣に耳を傾けていた。そして、ようやく話し終えた時には寂しそうな、今にも泣き出しそうな顔で僕を見つめていた。 「話してくれてありがとう、ゆうちゃん。でもお医者さんの言う通り長く生きられるケースだってあるんだから...病気になんて、ゆうちゃんが負ける筈ないから...」 ポロポロと泣き出してしまった彼女は涙を無理矢理拭いながら「ごめん、こんな事しか言えなくて。一番辛いのはゆうちゃんなのに」と言われ、思わず動きを止める。辛い──確かにある意味自暴自棄になっているのかもしれない。でも、不思議と死への恐怖などは感じられなかった。あの日以来心臓もなんともないし、なんなら今は少し高揚している様な── 「──!ゆうちゃん、大丈夫?」
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