3 意識してしまう

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3 意識してしまう

『──祐樹。可愛い。可愛い....』 あの時の晴也の台詞が耳から離れなくてずっと熱い。無意識に耳を押さえていると、前に座った晴也が「どこか痛かったりする?」と聞いてくる。ハッと意識を慌てて戻し「いや、別に」と返すが...あぁ、今のはちょっと感じ悪かったかも、と内心胸が痛む。目の前のこいつはバツが悪そうに朝ご飯を食べ始める。 ヒート期間の一週間、僕と晴也は毎日えっちをしていた。一度番で繋がる事の快楽を知ってしまった自分は彼を欲し続け、晴也もそんな自分の望みに応えてくれた。番らしくしてと言い出したのは自分だが...繋がったせいで何だか以前とは違う気まずさを感じる。というか、晴也が前よりイケメン...元々イケメンだけど何だか余計にキラキラしてみえて眩しい。えっちしてすっきりしたからかな。 「そういえば...俺は今日の二限から秋学期の授業が開講なんだけど....祐樹はいつから?」 不意に話題を振られ、意をつかれた様に心臓がドキッとなる。「あー...明日の三限から始まる」とさらっと返し、バターがたっぷり乗ったフレンチトーストに歯を立てる。彼が毎日作るご飯は昨日も変わらず美味しい。 「でも今日は出掛けるよ。蘭ちゃ....大学の友達に用事があるから」 「大学の友達って...中島蘭華って女の子?」 「え...何で知って...」 そこまで言い掛けてあの時の状況を振り返りハッとする。そういえばあの時、蘭ちゃんが僕の携帯を触っていた気がするけど、もしかして晴也が来てくれたのって──。
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