3 意識してしまう

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「その子から祐樹の電話を通して連絡が来たんだ。ヒートが来てしまった、ゆうちゃんを助けてって」 「蘭ちゃん...」 流石にこれは迷惑を掛け過ぎたから、これは何か奢らなければ。さっさと食べ終えて身支度に取り掛かる僕を見て「二人で会うの?」とよく分からない事を聞いてくる晴也。入学してから早半年以上。彼女と二人で会う回数なんて数え切れない程会っている。 「迷惑掛けたから謝らないとだし...ついでに一緒に昼ご飯食べるつもりだけど。どうしたの?」 「その...二人が気にしないなら──俺も同席していいかな?今日は三限だけなんだ」 え。 『全然いいよ〜。私も一度ゆうちゃんの番さんの顔見ておきたかったし!私はまだ苦手意識あるけど、電話して直ぐ駆けつけてくれたみたいだし一応お礼は言いたいかな』 ま、まじか...。 晴也にそう言われ早速彼女に電話すると、まさかの同席OK。自分の世界に晴也が関わる日が来るなんて。今迄だったら有り得ない変化である。こいつが自分から入ってくる事も無かったから尚更だ。 (....悪い気はしない) むしろ、ようやく普通に接してくれてると感じる。スマホをポケットに入れながら「じゃあ、場所は後で送るから」と玄関に向かう。後から慌てて来た晴也は「祐樹。忘れてる」と財布を手渡す。 「また後で。行ってらっしゃい」 「──い、行ってきます」 ....ただの挨拶なのに。 なんだか昨日からずっと自分はおかしい。笑みを浮かべて見送ってくれる彼の視線から逃れる様に、自分は足早に家を後にした。
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