3 意識してしまう

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──── ── 待ち合わせ場所は、晴也の大学から近いカフェにした。先に店に着いていた僕に「少し久し振りだね」と着いたばかりの蘭華が話し掛けてくる。帽子を脱ぎ、メニュー表を開きながら続ける。 「お疲れ様。十二時半から番さんが来るんだよね」 「うん。それ迄先に注文してていいって」 あまり食欲がないし甘い物だけにしようかと思っていたが「野菜も食べなさい」と彼女に睨まれてしまう。あれから特に病状は悪化せず、今の所薬を飲んで落ち着いてはいるものの...自分に余命がある事を忘れてしまう程、日常は彩り始め、変化しつつある。「病気の方は特に気にしなくて大丈夫だよ」と注文を終え、メニュー表を収めながら返す。彼女は不服そうに顔を顰め、僕の額を指で弾いた。 「ったぁ...蘭ちゃんのデコピンの威力強過ぎ」 「ゆうちゃんのばか。友達なんだから気にするに決まってるでしょ。あまり口を挟んだらうざいかもしれないけどさ....せめてこれくらいの気遣いは許してよ」 そう言ったタイミングで「お待たせ致しました」と注文したサラダが届く。彼女はそれ以上何も言わずに「これは私の奢りです」とサラダを前に差し出してくる。「ありがとう」と素直に受け取った自分はそのまま野菜を口にし、ゆっくりと咀嚼する。 「あの時は本当にどうしようって焦っていたけど、番さんがちゃんと行ってくれて安心したよ。話してみたら普通に良い人そうで....電話した時も物凄く焦ってたの伝わってきたなぁ」 「...焦ってた?」
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