3 意識してしまう

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食事を終え、カフェを出た自分達。「ご馳走様でした」と笑顔を向けた彼女は、チラリと隣の彼を見てから僕に視線を戻して口を開く。 「ゆうちゃん、また明日から学校でね。晴也さんも....また会った時は宜しくね」 「──うん。宜しく」 いつの間にか素で話している様子を見て内心驚く。僕が居ない間に二人で何か話していたのだろうか。手を振り遠ざかっていく彼女の背中を眺めながら「何話してたの?」と腕を軽く小突く。うーんと考える素振りを見せた後、晴也は微笑を浮かべて「祐樹の事だよ」と答える。 「それより...今日はもう帰る?」 「え?あ〜....どうしようかな」 明らかに話題を逸らされた。それにしても現在の時刻は十四時。もう帰ってしまうには何だか勿体なく感じる。 「折角だしこのまま何処かぶらぶらしようかな。暫く出掛けてなかったし」 「そっか。じゃあ、俺はこれで──」 「いやいやいや」 家に帰ろうとする晴也の襟を摘み、思わず引き止める。キョトンと振り返る彼に「あんたも行くの」と駅の方を指差す。 「.....俺も一緒に行っていいの?」 「....?この流れで解散するのは違うでしょ。嫌なら別にいいけど...」 「嫌じゃない」 食い気味に言われた後「嬉しい」と続けた晴也は柔らかい笑みを浮かべながら心底幸せそうに頬を緩ませる。──最近、こんな笑い方が増えた気がする。...それとも元々こんな風に笑う奴だったのかな。 「じゃあ..行こ」と促すと「初めてのデートだ」と僕の隣に嬉しそうに並ぶ彼。無言になりピタッと動きを止める僕の様子にサーッと青褪めた彼は慌てて「ごめん!調子に乗り過ぎた」と謝ってくる。本当に、最近こいつといると調子が狂う..。 「.....晴也は謝ってばかりだな。デート....って事でいいんじゃないの」
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