3 意識してしまう

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柄にもなくそんな事を言ってしまう。いちいち顔に出る晴也を一瞬でも可愛いなんて思ってしまった。もっと嬉しそうな顔が見たくて、思わず....って、可愛いってなんなんだ。 デートとか言ってしまったせいで、適当にふらっと何処か行こうかと思っていたくらいだったのに何だか色々と考えてしまう。 「えっと...先に近くの本屋に行ってもいい?」 「いいよ。祐樹の好きに動いて」 そう言って最初に到着した場所はカフェの近くにあった本屋。此処は近場の本屋と違って品数が多いから色々見応えがある。 「よく来るの?」 辺りをキョロキョロと見渡しながら後ろをついてくる晴也に「結構ね」とたまたま近くにあった本に手を伸ばす。 「何を買うかは行ってから決めてるんだ。ジャンル関係なく文字を追う事自体が好きで。青春、ホラー、ミステリー辺りを結構読むかも──って、ごめん。僕の話ばかりで退屈だよね」 本をぺらぺらと捲った後閉じてから戻す。首を傾げた彼は不思議そうに「なんで?」と微笑む。 「好きな人が好きな事を楽しそうに話してる姿って凄く素敵だなって思っていただけだよ」 「あ....」 「そういえば祐樹の部屋を掃除する度に本棚の本が増えてる気がしていたのはそういう事だったんだ。本棚の圧が凄くて毎度びっくりしてた。後、飾ってある花が変わるのが見ていて楽しかったな」 ──ちゃんと見ていたんだ、僕の事を。 花の存在に気付いて貰えているとは思っていなかった。「....ダイニングデスクに飾ってあるの、元々晴也にあげるつもりだったやつ」と呟くと、彼は「そうなの?」と驚いた顔で僕の顔を覗き込む。目を合わせると嬉しそうに綻び「ピンク色、可愛いよね」と言われ、胸の奥がじんわり暖かくなる。
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