3 意識してしまう

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本屋を出た後、駅の近くにあるショッピングモールに僕達は来ていた。普段あまり人混みの多い場所で買い物をしない僕と、こういう場所に望んで来る事がなかった様子の彼は少し興奮していた。 「人多くて避けていたけど此処のモール色々あるんだね。服とか何か買ったりしようかな」 そう言って歩き出そうとすると「待って」と不意に肩に手を置く晴也。振り返ると、右手にスッと自分の手を絡めて繋いでくる。「はぐれるからね」と繋いだ手を掲げて見せた後、特に気にしない様子で前を向き直る。対して僕はぷるぷると顔を真っ赤にして震えていた。 (な、何それ。ていうか、手....繋いだの初めて) 手がただ触れているだけなのに。 あったかい。 ....あったかいのはこいつの手の体温が高いから?それだけじゃない気がする。同じ男なのに自分より一回り大きな手。ゴツゴツし過ぎず、男らしさを残した角ばった綺麗な指。すべすべで気持ち良い──とは絶対に言わないでおこう。 「祐樹の手、繋いだの初めて」 思考を読まれたのかと思い「へぁっ」なんて変な声が出てしまう。ハッとして「確かにそうだね」と冷静さを必死に取り繕う。バレていませんように...なんて内心思いながら程よく手の力を抜く。 「....柔らかくて色白で、いい匂い」 すん、と軽く手の甲の匂いを嗅ぐ晴也。びっくりして何も言えずに真っ赤になり硬直する。 ショッピングモールのど真ん中でイケメンが手の甲にキスする勢いで顔を近付けている光景を目の当たりにした周辺の客達は黄色い声を上げながら僕達を観察していた。注目を浴びてしまった僕達。慌てて彼の腕を引っ張り、その場から足早に立ち去り、取り巻きがいなくなった所で「ばか!」と軽く叩く。
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