3 意識してしまう

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「距離感違うから!人が見ていたし...そういうのは此処じゃなくて家とかで──」 「人が居ない所だったらいいの?」 意地悪な聞き方をされ、グッと詰まる。 「冗談だよ」と困った様に笑った晴也は僕の手を引き、歩き始める。こいつは周りの目を気にしないのだろうか。一緒に居る時間が長過ぎて忘れかけていたが、晴也はイケメンである。他の人から聞いた所、モテモテで男女関係なく言い寄られていたらしいし...。さっきも周りの女性陣からの視線が自分にも注がれていた様な... (──ん?) 不意に彼の視線が一点に集中している事に気が付く。目線の先はバスケットボールのコート。ゲームセンター内に設置されているものだった。「興味ある?」と聞くと、ハッとした彼が「昔やっていたから、つい見てただけ」とかぶりを振る。 「別に遠慮しなくていいよ。ほら、折角だし好きな事やりに行こう」 「あ...」 腕を引っ張り、彼をゲームセンターに連れて行く。コインを入れ「はい」とボールを投げた僕から戸惑いながらも受け取った彼は、最初はおどおどしていたものの、ゲームが始まるとどんどんポイントを決めていった。スポッと気持ちの良いゴールの軽やかな音を聞きながら、僕は彼のプレーを一部始終見届けていた。 「スポーツ万能って聞いていたけど、本当に上手いんだなぁ。凄いね」 手を叩きながら素直に褒めると、ぼーっと浸っていた晴也が僕の方にくるりと向き直り「うん、楽しい」と無邪気な青年みたいな笑顔を向けてきた。突然の不意打ちで「ん!」と声が出てしまい、慌てて口元を隠す。 (なんだかなぁ) ころころと変わる表情の変化。変に晴也の事を意識してしまうのはどうしてなのだろう。
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