4 物足りない※

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(いやいや...これは違う) 流石にオモチャを使って一人で慰めるなんて事は出来ない。ハードルが高過ぎるし、もっと身近にあるもので手っ取り早く... ふと視界に晴也の姿が映り、着替えようと上半身の服を脱ぐ様子が窺える。脱いだばかりの服を綺麗に畳んで椅子に置くと、外着に着替えるのか洗面所に向かう。彼がいなくなったタイミングで身体を起こし、置かれたばかりの服に手を伸ばし、そっと手にとる。 ふわりと柔軟剤の香りがする。 なんとなく服に顔をうずめてしっかり嗅ぐ。 隣にいたら分かる、晴也の匂いだ。 (天気がいい日に干した洗濯物と同じ...お日様の匂いがする) 嗅いでいると何だか満たされていく気がした。嗅いだ状態のまま服に身体を擦りつける様にして抱き締める。なんだか、まるであいつに抱き締められているみたいだ。抱き締められた事なんてないのに、何だかそんな気がする。 えっちをしたいって言ったけれど....あいつの存在を感じられる物が一つでもあれば、一人でするだけでも十分な気も── 「──祐樹?」 いつの間に扉が開いていたのか──気付いたらリビングの扉の前で呆然と立ち尽くす彼が居た。服を抱き締めたまま匂いを嗅ぐとんでもない姿を見られ、少しずつ現実に引き戻されていった自分は必死に言い訳を探そうとするが取り乱し、何も言えなくなる。やばい...なんて言えば納得してくれるのか...。 「.....いやらしい顔してる」
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