4 物足りない※

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「──祐樹?大丈夫?」 意識飛んでいたよ、という彼の言葉でハッと引き戻される。今えっち中なのに軽く意識が飛んでた...。というか僕は何を考えてて── バッと顔を上げると、ゆっくり身体を揺さぶる彼の姿が。「無理させたかな。水、持って来ようか?」と心配そうに頬に手を添えてくる。....こいつに触れられると、なんだか頭がふわふわする。思わずすりっと頬を擦り寄せながら「へーき」と短く返す。グッと何かを押し殺した様な表情を浮かべる彼の背中に腕を回しながら続ける。 「そのまま続けて欲しい。....一緒にイきたい」 「....!うん...一緒にイこうか」 柄にもなく、一緒にイきたいなんて言ってしまった。 少しずつスピードを早めていく晴也。僕の身体に負担が掛からない様に優しく抱いてくれているのが伝わってくる。「遠慮しなくていいから」と耳元で囁くと、彼は答える代わりに勢いに拍車を掛けていく。僕の声も段々高くなっていき、不意に僕の身体を挿入した状態で抱き起こし、顔を近付け深いキスをする。そうして口付けたまま、僕達は一緒にイった。終わった後も、暫く余韻が続く中、僕達は軽いキスを何度も重ねた。 「──待ってて。今、水持ってくる」 寝かせた僕の頭を撫で、髪に指をさらりと通して立ち上がる晴也。うつ伏せのまま動けない僕を見て、彼は寝室を後にする。誰もいなくなった静かな寝室で、僕は唇にそっと触れる。まだキスの感触が残っている気がする。唇だけじゃない。彼が触れた箇所が未だにずっと熱い。僕を抱く時の顔、優しく気遣う時の顔、意地悪で楽しそうな顔──頭の中も彼の些細な時に見せた表情でいっぱいだ。 (──そうか。好きなんだ、晴也の事が) 直感で僕はそう思った。 恋愛が何かずっと分からなかった。 説明してと言われると今でもちゃんと出来ない。 でも── 「水、持って来たよ」と戻ってくる晴也。コップを受け取り飲みながら彼をチラリと見ると、にこにこと嬉しそうに僕の様子を見て微笑んでいる。僕は...彼に可愛いって言われると嬉しい。触れられるとドキドキする。不意打ちで距離が近くなると途端にどうすればいいか分からなくなり振り回される。 これは紛れもなく恋だ。 僕は彼に恋をしている。
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