5 君と紡ぐこれから

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彼が泣いている事に気が付き、ピタッと動きを止める。「....俺の事が?」と聞き返され、それ以上何も言えなくなる。ただ好きだって言うだけなのに、何で言えないんだ、自分は。 「待って....晴也!」 立ち去ろうとする彼の腕に反射的にしがみつく様に引き留める。遠くを見たまま「離して、祐樹」と言うだけの彼に「嫌だ」と抵抗する。聞く耳を持とうとしない彼にムカッとしてしまい、そして── 「僕がずっと言えなかったのは、晴也の事が好きだから!」 「え」 思わず告白してしまっていた。 驚いた晴也は振り返るが、僕が前のめりに体重を掛けていたせいでバランスを崩して一緒に倒れてしまう。彼に抱き抱えられる形になった自分は、彼の腕の中で「好きなんだよ」と呟く。 「最初は死ぬ迄の暇つぶし感覚で番の解消を取り止めた。僕は何も考えていなかったし、どうでもよかった。でも晴也との時間が増えて、晴也の事を沢山知って僕は変わった。僕は晴也と....本当の意味で番になりた──」 「祐樹」 ぽふっと口元を手で隠され、無理矢理発言を止められる。迷惑だったか...と不安に思いながら彼を見ると、さっきとは違う泣き笑いの様な表情で僕を見つめていた。揺れる瞳の中に僕がしっかり映っている。 「....返事なんて、求めてなかった。俺が祐樹の人生を壊した事に変わりはないから。好きになる資格も、ましてや好きになってもらう資格もないと思ってた。それは....今も変わらない」 「.....」 「でも....そんな思いとは裏腹に一緒にいればいる程どんどん好きになっていって──だからあの時、祐樹が離れる素振りを見せた時に言ってしまった。一生言うつもりはなかったんだ」
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