5 君と紡ぐこれから

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「祐樹のお母さんに会うのはあの日以来か....」 車のシートベルトをしながらポツリと呟く晴也に「不安そうだね」と助手席に座る僕。車は朝早くからレンタルして借りたものだ。 両親は当たり前だが、晴也の事を酷く嫌っている。彼等の前では晴也の話題は禁句な程。番として生きていく事を決断した時に物凄く心配され、止められたのを思い出す。 「大事な一人息子を傷ものにした挙句、息子さんと結婚させて下さいって...我ながらとんでもない奴だという自覚はある」 「傷ものって...」 どんな反応をされるのか、正直僕も分からなかった。あの頃みたいに今にも泣き出しそうな顔で止めるか...それとも──。病気が発覚した日の別れ際の母親の表情は今でも頭の中に残っている。母さん達は僕の事を大切に思ってくれているのに、僕は今迄周りの事も考えずに自分を蔑ろにしてきたんだな、とふと思う。 「.....ちゃんと全部話すよ。晴也が僕を諦められない様に、僕も晴也との未来を諦められないから」 ギュッと隣の彼の手を握りながらそう返す僕に晴也は力強く頷き、車を発進させた。 「──着いたよ。此処で合ってるかな」 一時間程してようやく着いた実家。家の横の駐車場から家を見上げる晴也に「合ってるよ」と助手席から降りる。駐車場の空いているスペースを指差しながら続ける。 「晴也は其処に車を入れてて。僕は先に母さんに挨拶してくるから」
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