1 僕と彼の関係

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『ちょっと、いい加減に──』 流石に度が過ぎている。 振り返ろうとした次の瞬間、ガリッと歯がうなじ辺りに立つのを覚えた。あっと思った時には遅く、相手はググ...と噛む力を大きくしていく。ピリピリと電気がうなじに走っていく感覚。初めての感覚に自分は対処出来ず、そのままバッタリと倒れてしまう。そうして完全に意識は途絶えてしまった。 あの後完全に意識を失い、二人一緒に倒れてしまったみたいで、最初の発見者が先生を呼んだ事で事は大きく広まってしまった。病院に行き、彼と再会した時には、彼は両親に物凄く怒られ頬を殴られていた。その様子を、ようやく落ち着いた僕と泣きそうな表情の母親が眺めていた。 僕の無関心さがあの場を簡単に終わらせてしまった。両親は何度も『本当に番として生きていくのか』『相手はただのレイプ野郎だ』と散々罵り、反対していたのだが、最終的に僕の意思を優先してくれた。 だって面倒だったし。 誰かを好きになるとかそういうのよく分からないし、この先僕を貰ってくれるαなんて居る筈がない。我ながら無愛想で可愛くないと自覚はある。 (──あれから二年か) ボーッと天井を眺めながら流しっぱなしの音楽に耳を傾ける。不意に視界に映った人物が「祐樹(ゆうき)」と声を掛けてくる。髪がさらさらと溢れ落ちていく様に流れるのを眺めながら声の主とゆっくり視線を合わせる。
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