6 さよならの向こう側※

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「これからどんどん上手くなる予定だし...それよりさっきの話。稼いだお金で晴也と遠くに旅行したいなって」 「旅行....いいね。海外とか行ってみたいな」 「え、行きたい。そっか、自分達で稼いだお金で色んな事が出来るもんね....わ〜やりたい事、なんか今直ぐには言えないけどいっぱいあるかも」 人生が充実していると欲も大きくなっていくんだなとしみじみ思う。一向に箸が進まない僕を見兼ねて「ほら、冷めちゃうから」とジャガイモを口に入れてくる晴也。ホクホクでタレが染み込んでいて凄く美味しい。 「....美味しい。成功だね!これでもう肉じゃが一人で作れるね」 「半分俺も手伝ったけどね」 「黙って」 言い合いをしながら温かい食事にありつける僕達。前迄だったらこの空気は生まれなかった。僕と晴也が向き合ったから生まれた『今』に、もうあれから時間は結構経つのに未だに思い返して一人嬉しさで泣きそうになる。 「──祐樹。今週はいよいよ渡米だね」 不意にそう切り出した彼の言葉にピタッと食事を止める。土曜日はいよいよ日本を発つ日である。母親と一緒にアメリカに向かう。「...そうだね」となるべく明るく返すが、やはり彼は不安そうだった。今日迄殆ど何も無かったが、僕の余命は半分近く切っていた。死迄のタイムリミットは確実に狭まっている。 「....蘭ちゃんと一緒に空港迄見送りに来てくれるんでしょ?その時は笑って見送ってね。じゃないと安心して向こうに行けないからさ」
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